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金木犀
ふと気がついた事がある。今年の秋は、金木犀の香りを嗅いでいない。季節を感じる濃厚な香り。爽やかな朝に嗅ぎたい香り。大好きな香りなのに・・・。今までとは少し違う秋なのだろうか?
10月の半ばに、5か月ぶりに東北の被災地の視察に出かけた。5月に行ったときと比べると、見違えるほど片づけが進み、被災地に暮らす方々の復興への意気込みが感じられた。もしかしたら、私が会った人だけかもしれないが、被災者の方々はみんな明るい。面白おかしく当時の状況や現状の説明をしてくださった。
福島では、旅館の女将に福島の観光業の現状についてお話を伺った。この旅館のある温泉地は、震災後、16軒あった旅館のうち、6軒が早々と廃業した。希望の持てない現状。福島は見えない敵と戦っている。放射能と風評被害。戦い方がわからない戦い。いつ終わるのかもわからない戦い。それでも戦い続けるしかない。
石巻では、女川の自宅を津波に流された旅行会社の専務さんに、私たちのバスのガイドをしていただいた。被災地を廻りながら、震災の時の状況を事細かに話してくださった。高台にある女川町立病院の駐車場に立ち、港やかつて街があった場所を見渡した。たくさんの人がこの場所に避難をしてきた。駐車場まで上がり、ここまでくれば大丈夫だろうとホッとしたところを、予想を超えた高さの津波が襲い、町の人口の10分の1の人が命を落とした。鳥肌がたった。涙がこぼれた。すぐには受け入れられない現実があった。
被災地を廻って思う。自分たちが望んだかどうかは別として、日本は大きな変革期を迎えていることを。日本人全体が古い価値観を捨てて、新しい国づくりを考えないといけない時がきている。
ベトナムに進出している会社の社長から、お話を聞く機会があった。今、ベトナムでは、中国人と韓国人が自分たちの利益だけを考え、ルールや秩序を無視した経済活動を行っている。日本人は、マナーが良く、現地の人の利益も考えて商売をするため、あまり儲けてはいないが現地の人から尊敬をされている。
これだ!と思った。経済的には、すでに一流国とは言えないかもしれない我が国。でも、他の国に負けないものはたくさんある。自然・文化・勤勉さ・真面目さ・忍耐力等々。経済発展なくして幸せな国家などできないという学者もいる。日本人は違うと信じたい。日本はギリシャやポルトガルとは違う。貧困を不幸などとは思わない。いかなる状況におかれても幸福だと感じる能力を持っている。西洋の騎士道に対して日本には武士道という高貴で美しい考え方がある。他の国から尊敬される国になろう。他の国から尊敬される国になろう。日本人ならば簡単なことだ。
仕事で行った岡山大学の構内で、金木犀の花を見つけた。近づいて香りを嗅いでみた。すでに盛りを過ぎているのだろう。かすかな香りが鼻腔をくすぐったが、予想していた濃厚な香りではなかった。今年の秋は残念だが、楽しみは来年にとっておこう。来年は、きっと素晴らしい年になるだろうと期待して。

平成21年11月
前田洋一

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